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10月23日の早朝6時半、わたしを乗せたオーストラリア・カンタス航空の飛行機は、ほぼ予定時刻どうりに成田空港へ着陸。再入国手続きをすませ荷物を受け取り、国際線ターミナル1への連絡バスに乗り込む。そうなんです、お次はパリ行きのエールフランスにチェックインしなければなりません。今回の日程はたまたまオーストラリアとパリ公演がくっついていて、帰国しても家に戻る時間なんてありません。衣類はTシャツにコートと二つの季節のものを持ってきたし、楽器機材も両方のプロジェクトに必要なだけはケースに詰め込んである。オーストラリア公演を無事に終えて、気分は半分以上も軽くなっていた。数時間の帰国といっても、やはり自分の国なので、ほっとひと息をつくところはあります。グローバル携帯電話を国内モードに切り替えメールする。再び出国手続きをした後、待ち時間はたっぷりあるので免税店をのぞくことにした。ちょうどほしかったデザインの腕時計を見つけて購入。一つ旅に出るたびに、一つ腕時計を手に入れるのがいつのまにかクセになっているのです。午前10時半発、パリ直行便が離陸した。

hotel.jpg夕方4時にシャルル・ド・ゴール空港に到着。日本との時差がー7時間なのでパリはまだ23日。空港からタクシーを拾って市内へ走る。見覚えのある路に出てきた。「そうそうこの教会の前よ、ここで停めて」とわたしはタクシードライバーに伝えました。今年5月に訪れたこのホテルは、気さくなフロントの雰囲気も部屋の様子も何ひとつ変わらない。しいていえば、最寄りの地下鉄ジョルダン駅が構内工事で閉鎖されていることくらい。ここから振付家クラウディア・トリオッジ宅までは歩いて5分ほど。さっそく「着きました」コールをすると、クラウディアとボーイフレンドのシリールがわれんばかりの笑顔で即会いに来てくれました。6月にヴァレンシェンヌのスタジオで制作し、モンペリエ・ダンスで初共演した「Opera's Shadow」(参照: http://file.blog-haco.diskunion.net/2005/06/index.html)を、このたびパリで三日連続公演するので、わたしは演奏家の一人としてやって来たのです。クラウディアのアパートでは、今回から一緒に仕事するエンジニア、ピエール・ゴーフレとの打ち合わせがすでに始まっている。わたしは24時間以上の移動の疲れで猛烈に眠気がおそってきたから、早めにホテルに退散しベッドで横になることにしました。

10月24日の午後2時、パリ郊外でメトロのオーベルヴィリエ駅の付近にある会場Les Laboratoiresを、初めて訪れました。ここでは実験的なシアターやパフォーミングアート、ヴィジュアル、サウンドアートの分野の芸術家を招いたプロジェクトが催されている。建物内に入りホールを覗くと「Opera's Shadow」で使われる巨大なスクリーンの木枠フレームの組み立てがもう終わっていました。「ボンジュール!」もう一人の音楽家ミッシェル・ギイエ、照明オペレーターのオフェリアン・ドゥ・フュルサックにめでたく再会。本日は、各自の楽器類をフレームの背後にセッティングしただけで、こちらの用事はすんでしまった。照明の仕込みを待たなくてはならないからです。何しろライティングの色光と影だけで、大スクリーンにパターンを描くのだから、各照明のレイアウトは緻密な作業このうえありません。
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10月25日の午前中から仕込み。音響担当のピエールが多チャンネルのスピーカー・システムを設置して回線チェックをしている。今回の演奏をマルチ録音するためその準備も含んでいます。午後4時にやっと音出しをして、クラウディアの声とオブジェ、ミッシェルのサンプラーとエフェクト、わたしのラップトップとエレクトロニクスの三人の音量バランスを取る。6月の公演の感覚はすぐさま蘇ってきました。音響のピエールとも相性が良さそうです。Les Laboratoiresの入り口吹き抜けのホワイエには、大きめの板木の机と椅子がいくつも並べて置かれてある。昼間はスタッフがミーティングしたり、インターネットで作業したり、ランチを食べたり、もちろんイベント時には客が座って飲み食いやおしゃべりしたりと、多目的に使われる心地よいスペースです。1階には小ホールとスタジオ、アトリエ、キッチン、2階はスタッフ用のオフィスになっている風通しのいい空間。

10月26日、本番初日。午後2時には集合し、全員で通しリハをしていい感触を得ました。「満席ですって」とクラウディアがにっこりとして楽屋に伝えに来る。8時50分。三人の演奏者は、暗転した客席の脇を通って大きなスクリーンの背後へまわる。ショーはスタート。最初はすべてが真っ暗闇の沈黙。少しずつ少しずつ音が足されていき、クラウディアの美しい声のテーマがはじまる。スクリーンにはぼやっとした光がかろうじて浮かぶ。それから幾何学的な模様や色彩の変化をゆっくりとした動きで見せていく。音楽と同期するのではなく、二つの並行した時間の流れが作りだされる。客席からは演奏の様子はいっさい見えません。観衆は光のスクリーンと1時間ばかり対峙することになるのです。音楽が終わると、フレームの向こうから拍手喝采が起こりました。客席が明るくなり、わたしたちはスクリーンの前に並んで微笑みおじぎ。こうして、初日をオーディエンスの好反応で乗り切ることができたのです。
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HACO
歌手作曲家、プロデューサー、サウンドアーティストとして精力的に活動中。
元アフターディナー、ホアヒオ、ヴューマスターズ(現音採集観察学会)を主宰。
隔月刊ニュースレター配信中。

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