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11月13日、ヴューマスターズ(現音採集観察学会)2005のレクチャーが大阪築港赤レンガ倉庫で実施されました。前半は活動報告で、昨年度のワークショップ参加者から75件近くも集まった提出レポートからピックアップして紹介。観察記録ライブラリーのフォーマット(録音、日時場所、写真、コメント)を採集者が、ひとつの"ViewMasters"というアプリケーションとして、鋭敏に使いこなしているのがうかがえる。次には、「音」観察をきわめる 〜サウンドアート編〜、と題した2004年度のコンサート&パフォーマンス(佐藤実(m/s)、角田俊也、ニシジマアツシ)のヴィデオ記録を流しながらの解説。他の関連としては、わたし自身が今年7月に山口情報芸術センター(YCAM)で担当したサウンドワークショップ(参照)についてもすこし触れました。

Yuko Nexus6、小島剛、わたしの三者でフリートーク。「ヴューマスター」的、未来をさぐる、をテーマに四年間のイベント感想と世の中の流れを振りかえる、といった趣旨。小島氏によると「一年目のワークショップで音源レポートはほとんどカセットで提出されたんですが、二、三年目になるとだいたいCDRで送られてくるようになりました」。やはりここ数年にかけてのデジタル・テクノロジーの発達と急速な普及は見のがせません。携帯電話はマルチ化が進み、録音機として使った参加者がでてきたのも昨年あたりから。iPodの出現、ポッドキャストの文化も生まれました。Nexus6氏からはネットラジオの実践者としてdedio: http://sweet.podcast.jp/home/wpaoや、オランダのサウンドアーティスト主宰の参加型サイトSoundTransitなど、「新たな発表の場として可能性があるよ」という例や意見を聞かせてもらいました。webやツールにまつわる環境の移り変わりによって、聴き手の意識も知らず知らずのうちに変化しているようです。その一方で、読みとり術、発想の転換は、脳や感覚のなかで養うソフトです。振りかえってみれば、赤瀬川原平氏の路上観察写真「植物ワイパー」や、小津安二郎監督の映画における「枕ショット(pillow shots)などもいいお手本でしょう。こういった表現を音から透かしみて、「耳」の未来へと可能性を広げることはできるかもしれません。(*注: シアトル在住のDale Lloyd氏が企画しているコンピレーションで、アーティストが選んだpillow shotsに音をつける現在進行中のプロジェクトも紹介しました)。

後半は、ゲストの細馬宏通氏に「絵はがきを再訪する -風景と現実感-」というテーマで、たいへん楽しいお話しを聞かせていただきました。「なぜ人は旅に出るのか?」という問いにはじまり、細馬氏の場合は明治時代に作られた『日本八百八勝』という白黒写真の絵はがきセット(東京図案印刷社製)を手に入れたことから、「絵はがきの名所を訪れてみることにした」のがきっかけだったそうです。昔の風景の足跡を追い、現在の風景と重ね、彼が読み解いていくプロセスは、実に明解で引き込まれるものです。きわめつけは、「高津宮がどこにあるか知っていますか?」と聞かれても、会場内の誰も答えられなかったのですが、「これは昔の名所で、海際の絶景の場所にあったんですね」というお話に、浪速っこたちはびっくりしました。「いまのキタやミナミや大阪港は海や砂州だった」、それを埋め立てたので、現在の高津神社から海は見渡せないとのこと。「絵はがきの地形と照らし合わせて、今ある地形と部分がぴったり一致してくると、まるでそこに水があるかのように感じてくるから不思議」という言葉に、わたしは地平が、いや脳が開けていくような気がしました。細馬氏は、ケータイで録画したムービーも駆使し、数々の景色、物件を分かりやすく解説してくださいました。
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11月13日〜12月4日の期間、これまで積もりに積もったVM参加者のライブラリーや関連アーティスト作品、コンサート記録ヴィデオも、赤レンガ倉庫会場内にて展示されています。お立ち寄りの際はぜひ試聴、閲覧くださいね。
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HACO
歌手作曲家、プロデューサー、サウンドアーティストとして精力的に活動中。
元アフターディナー、ホアヒオ、ヴューマスターズ(現音採集観察学会)を主宰。
隔月刊ニュースレター配信中。

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