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5月30日、アパート生活にもぼちぼち慣れてきた。部屋の住人は若い女性で、一ヶ月間のバカンスでベトナム旅行に出かけているということでした。壁、天井、床は白く塗られていて、写真やエスニックな小物がさりげなく飾られていた。棚にはアートや仏教、ビートニックの本が並んでいて、日本のおたふく面や、アフリカ模様のひょうたんも見られました。小さな冷蔵庫にはまだ現像されていないフィルムが数本保存されているから、写真家なのかしら? 床にはファッション雑誌が積み上げられていて、幅広くいろんなものに好奇心のある人。そんな素敵な娘の小さなフラットをつかの間借りることができたのですから、居心地はとてもよかった。

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実は、パリに発つ前から心配ごとがありました。神戸に住むわたしの父が急病になり、手術を受けるのが明日に設定されていました。海外にいては手術の立ち会いができないので、不安なおももちでした。そんなところへ、旅行の数日前に、西宮の拙宅の周りに置いていた四つ葉のクローバーの鉢を二つ、何ものかに盗まれました。ささやかだけど、幸運を呼ぶクローバーを持ち去られたのはいささか気分が悪かった。父のこともあるし、渡航前でもあるし、、。

ところが、偶然のめぐり合わせか、このアパートの表扉には、写真をくり抜いた四つ葉のクローバーが貼ってあったのです。おまけに、窓辺にはほんものの四つ葉のクローバーが二鉢置かれていた。わたしは目の前がちょっぴり明るくなりました。Good Luckの兆しを眼の端に入れながら、安らぎをかんじて過ごすことができるなんて。だから、この7階部屋で暮らす住人にも、感謝しなくちゃ。


昼過ぎに、メトロに乗った。パリの地下鉄の車内では、ラジカセを鳴らしてヒップホップのMCをはじめるアラブ人のティーンエイジャー、アイリッシュ風バイオリン演奏をはじめる老人など、小銭かせぎで演奏する人たちをよく見かける。ほとんどの乗客は見て見ぬふりをしていますが。これもカラフルな人種のうずまくパリのひとこまではあります。どんな人種であっても、改札出口の扉を押さえてすぐ後の人が通りやすくしてあげたり、そうしてもらった人が「メルシィ」と軽く礼をいうマナーは、とても気持ちのいいもんです。

オシュ駅からまっすぐ歩いて、Centre National de la Dance(国立ダンス・センター)に向かった。現代風コンクリート打ちっ放しの立派な建物が目の前に表れました。ロビーにはスタイリッシュなソファーが配置されている。ダンススタジオ4に入ってみると、広くてなめらかな木のフローリング、壁には大きな鏡、アップライトのピアノやPA機材まで設置されていた。クラウディアが新作のクリエイションを始めているところです。
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「Gabin (Nuissir)よ」と彼女は今回共作するダンサーを紹介しました。彼はにこやかに微笑んで、「東京でショーをしたことがあるよ。アジアの文化は大好きです」と挨拶しました。アフリカ系のハンサムなダンサーで、柔らかな話し方をします。名前の発音をカタカナにすると"ガバー ン"に近い。「20年前にヒップホップのダンスチームを設立して、フランスでは先駆者。ある時期はスター的存在だったのよ」。前もって、クラウディアから彼の経歴を聞いていました。二人の新作ダンスの音楽を担当できるなんて、わたしにとってすごく光栄なことです。

さっそく、スタジオ4の機材をチェックしてみました。「ここで音が出せないかもなんて、誰がいったの?」とわたしは呆れてもの言った。シンプルだけど、われわれがリハーサルや創作するぶんにはじゅうぶんな機材が装備されていた。ミキサーやスピーカーも新しく、パワーも申し分ない機種で「はっきり言って、昨日の練習スタジオよりもずっと音質が良好なのよ」。この長時間無料で使えるダンススタジオを予約しておきながら、クラウディアたちがわざわざ別の貸しスタジオにお金をはたく理由なんかどこにもありませんでした。

そんなわけで、明日以降はこのダンス・センター(略称CND)で音関係のリハーサルもおこなうことに決定!
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HACO
歌手作曲家、プロデューサー、サウンドアーティストとして精力的に活動中。
元アフターディナー、ホアヒオ、ヴューマスターズ(現音採集観察学会)を主宰。
隔月刊ニュースレター配信中。

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