6月12日、国立ダンス・センターCNDでひきつづき創作。今回のダンス作品のコラボレーションは、振付家クラウディアとヒップホップ・ダンサーのガバーンを組み合わせてはどうか?という一ディレクターの提案で実現したそうです。本作は24日からはじめるモンペリエ・ダンスで初演されます。昨年6月にクラウディアの作品『オペラ・シャドウ』でわたしも演奏させていただいた大規模なフェスティバル。そして、今回はめずらしくクラウディアもデュオで踊ることになっています。彼女の目論見は、ヒップホップの第一人者として知られるガバーに、実験的な方向へと新境地を開かせることでした。振付の説明をする彼女の動きはぶっ壊れたマリオネットのように、もしくはコマ送りのフィルムのようなかんじでしたが、いちいちポーズがきまっている。今まで、実際に彼女が踊ったところを見たことがありませんでしたが、身体で空間を表現する才能は一瞬にしてよみとれました。7歳からイタリアでダンスを学び、パリで20年間活動しているそのキャリアから、やっぱりさすがだなぁと感じます。なんでまた、歌なんか歌いはじめたんでしょう、もったいない。「ガバーンはどんな音楽でも、たとえ自然の音でも踊れるのよ。床で見事にブレイクダンスできるわ」とクラウディアはのたまうのですが、そんな彼への注文は同期性のない正反対の表現でした。今回のステージは鏡のようなシルバーの衣装に始まり、そのあと二種類のコスチュームに着がえ、最後にはぜんぶ脱ぐと強引に決めている彼女です。「ぼくにはぶかぶかのカーゴパンツが要るんだ。ファンが見に来るからさ、きまりわるいなぁ」とガバーにはそうとう抵抗感があるようです。同じダンスでもこれだけ土俵が違うんですね。わたしは今回音楽のクリエーションだけでモンペリエの方は参加できませんが、これはまさに見ものだったと思います。完成ステージを見ることができなくて残念無念。
といっても、あと2日間で新作のダンス音楽25分を仕上げなければなりません。まだダンスも音楽も前半の部分しかできていない、どうしよう? クラウディアは振付をはじめると、それしか頭にないほど厳しい表情になって、音楽のことはそっちのけです。「そして、後半のダンスの展開はどうなるの?」とわたしが訊いても、「まだ細かい部分は何も考えてないのよ」というような会話が続いていました。しょうがないので、数日前から彼女のイメージに合いそうな音素材をラップトップに集め、こちらはこちらでプログラミングの作業を淡々と進めていきました。14日の朝にわたしはパリを発つので、何がなんでも明日までに録音を完了してしまわなければなりません。
CNDからアパートに帰ってからも、ラップトップとヘッドフォンで恨詰めて作業を続けました。わたしのふだんLiveで使っているのは、コンピュータ・キーボードを弾いてオーガニックに演奏する方法で、かなり反則技を多用しています。しかしそれを録音しようとするならば、CPUに負荷をかけすぎて即クラッシュしてしまうことは承知のこと。その解決策として、MIDIトラックに演奏的要素をすべてプログラムし、9つの部分に分割しながら録音していくことにしました。そうすれば25分の組曲に繋げることができるだろう。やっと曲作りの作業を終えたときには、時計の針はすでに午前3時をまわっていた。「まったくパリにきてまで、こんなオタクな夜なべ作業をするなんて! 」
6月13日、最終日。わたしはスタジオ4のスピーカーを大音量で鳴らしながら、ラップトップの曲のボリュームやつながりを最終調節。クラウディアとガバーンはあいかわらず、前半のダンス部分を復習していました。クラウディアは衣装の仮縫いのシルバーの端布を頭に乗せて、鏡に向かってイメージをふくらませている。それを横目で見やって、わたしはニヤリと笑う。彼女はおかしなことを大まじめに実行する特技をもっていて、真のアーティストなんだなぁと感心します。
「うまく焼けたわ!」とわたしは誇らしげにCDを頭上にかざしました。できあがった曲をプレイヤーに乗せてスピーカーで再生すると、「あっ、ほんとう!」とクラウディアとガバーも顔をほころばせました。やれやれ、これで仕事は終わった。あとは、モンペリエまで二人でがんばって、いい舞台をつくってくださいね!
"How to dance" - スタジオ4のホワイトボードには、誰かがレッスンで書き残した絵があったので、写真に撮っておきました。
といっても、あと2日間で新作のダンス音楽25分を仕上げなければなりません。まだダンスも音楽も前半の部分しかできていない、どうしよう? クラウディアは振付をはじめると、それしか頭にないほど厳しい表情になって、音楽のことはそっちのけです。「そして、後半のダンスの展開はどうなるの?」とわたしが訊いても、「まだ細かい部分は何も考えてないのよ」というような会話が続いていました。しょうがないので、数日前から彼女のイメージに合いそうな音素材をラップトップに集め、こちらはこちらでプログラミングの作業を淡々と進めていきました。14日の朝にわたしはパリを発つので、何がなんでも明日までに録音を完了してしまわなければなりません。
CNDからアパートに帰ってからも、ラップトップとヘッドフォンで恨詰めて作業を続けました。わたしのふだんLiveで使っているのは、コンピュータ・キーボードを弾いてオーガニックに演奏する方法で、かなり反則技を多用しています。しかしそれを録音しようとするならば、CPUに負荷をかけすぎて即クラッシュしてしまうことは承知のこと。その解決策として、MIDIトラックに演奏的要素をすべてプログラムし、9つの部分に分割しながら録音していくことにしました。そうすれば25分の組曲に繋げることができるだろう。やっと曲作りの作業を終えたときには、時計の針はすでに午前3時をまわっていた。「まったくパリにきてまで、こんなオタクな夜なべ作業をするなんて! 」
6月13日、最終日。わたしはスタジオ4のスピーカーを大音量で鳴らしながら、ラップトップの曲のボリュームやつながりを最終調節。クラウディアとガバーンはあいかわらず、前半のダンス部分を復習していました。クラウディアは衣装の仮縫いのシルバーの端布を頭に乗せて、鏡に向かってイメージをふくらませている。それを横目で見やって、わたしはニヤリと笑う。彼女はおかしなことを大まじめに実行する特技をもっていて、真のアーティストなんだなぁと感心します。
「うまく焼けたわ!」とわたしは誇らしげにCDを頭上にかざしました。できあがった曲をプレイヤーに乗せてスピーカーで再生すると、「あっ、ほんとう!」とクラウディアとガバーも顔をほころばせました。やれやれ、これで仕事は終わった。あとは、モンペリエまで二人でがんばって、いい舞台をつくってくださいね!
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歌手作曲家、プロデューサー、サウンドアーティストとして精力的に活動中。
元アフターディナー、ホアヒオ、ヴューマスターズ(現音採集観察学会)を主宰。
隔月刊ニュースレター配信中。
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