8月14日、京都芸術センターのスタジオで公開リハーサル。予想外に多くの、しかも幅広い年齢の人々が見学に来られたられたのでびっくり。新聞社の取材にも手際よく対応するルーシー。そのあと、舞台衣装をみせてもらいました。京都の街をいっしょに出歩いて買ったそう。カジュアルで今年風で、いい感じ。

８月15日、全体の曲構成が出来上がったので、かねてから希望していた4チャンネル・サラウンド音響作品に初挑戦。 自宅スタジオでシュミレーションしながら、4CHのプログラミングを書く。まずステレオで制作していたトラックのいくつかを振り分けて、リア(後ろ）スピーカーから重ね出してみると、それだけで立体音響に！ こりゃ楽しい〜。一番試してみたかった波の音は、あまりに効果がありすぎて船酔い状態。自分でも吐き気がするほど強烈だったので、心地よい程度におさまるように調整。

8月21日、夕方から仕込み。リアスピーカーも用意していただき、ラップトップから4チャンネルで音出し。京都芸術センターの講堂は残響が多く、音の輪郭がややぼやける。音響スタッフのオオクボさんとオペレーターのタケバヤシさんが吊りのフロントスピーカーの向きを変えたり、低音用サブウーハーのチューニングをしてくださる。

8月22日、朝からサウンド・チェックのつづき。常設のフロント・スピーカーを2個足してまた調節。海辺でさざめく波の音、キーボードを打ち込む音、飛び交うレーザービームの音なんかが、立体的で時に客席を取り囲むような音響空間をめざして。一方、オペレーターのイトウさんとルーシーの間で照明をあてる作業が始まる。ダンサーの動きが、顔が、ステージに置かれる"物"たちが、浮き立ってくるわくわくする瞬間です。


8月24日、各セクションの振付には磨きがかけられていました。白むく花嫁衣装の着付け解説シーンもずいぶんと進化をとげていた。ぎりぎりまで調整を続けるルーシーとダンサーたち。曲のサイズや音量も微妙に変化するのでそのたびに更新。いよいよ仕上げです。

8月25日、「LUCY/KOTA project」のゲネプロ。山崎広太組は4日前にメルボルンから京都に到着したばかり。オーストラリアのダンサー4人と照明・舞台美術のベンさん、そして音楽の菅谷さんというチーム。
『Setting』は、「層になっている作品」だというのがあらためて理解できました。インタビュー、踊り、セットレイアウト、記憶。ステージ上でいくつもの時間が並列して流れている。
『Chamisa 4C℃』は、4人のダンサーの変則的な動きや衣装、照明と舞台美術のセンスに眼をひかれました。チラシの内容文を読んで勝手に想像していたものとは大違い。

8月26日、公演初日。

客席後ろの音響・照明オペデスクにて、わたしはラップトップで演奏。舞台音響はきっかけが肝心なので、普段とはちがった種類の緊張感があります。
『Setting』は、ジュン vs ミチのキャラがいきなり立っていて、多くのお客さんが微笑みながら見ていたのが印象的でした。普遍的だけれどかけがえのないもの、一瞬一瞬が、きめ細かな視線で描かれている作品だと思う。それに伴ういろんな"物"が舞台上に並べられ、物語が進むにつれいっぱいになって、最後には"地図"のようになる。ダンサーは"物"を小道具として使う時もあれば、"物"たちの枠のなかで踊らなければいけないこともある。

アフタートークでは、JCDN代表のサトウさんが司会をつとめて、2人の振付家に質問しました。異国のダンサーとの交流をテーマに作品づくりを説明するルーシーと、チャミサの花の美しさと狂気、舞踏を取り入れたことに言い及ぶ広太さん。対照的な作品が生まれたプロジェクトの面白さ！

8月27日、公演2日目も大入り満員。

『Chamisa 4C℃』はまた手を加えられ、前半は引き込まれるようになってきました。フィービー、リー、ニック、ジョアンという体型の異なるダンサーのキャスティングも良いし、負傷者のような歩き方をしたかと思えば、美しくターンしたり、鏡を使った演出や、顔の変化も見場です。振付家の内面をダンサーの動きを介して体現化したような作品なので、個々の観客との距離感をどうするかがポイントになりそうです。

京都公演打ち上げパーティー。

JCDNから贈られた浴衣を着せてもらってご満悦のルーシー。彼女の笑顔はいつも素敵です。AJDXの他のプロジェクトに参加しているダンサーや振付家、カンパニー関係者が集まり、交流の会は大いに盛りあがりました。