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スイスの革新的な即興演奏家5名と、関西を拠点に活動する音楽家との共演が大阪築港赤レンガ倉庫で二日間に渡っておこなわれました。3月の11日はソロのセット。12日はセッションのプログラムでした。
(NPO大阪アーツアポリア詳細ページ:http://www.arts-center.gr.jp/soundart/soundart%20studio%20open/Signal_to_Noise.html)
わたしは出演した二日目しか目撃することができなかったのですが、ざっとコンサートの模様を振り返ってみます。各セッションによって演奏者の配置が換わるようになっていて、お客さんはその都度向きを変えて鑑賞。各20分で9組の長丁場なのに、身じろぎもせず耳をそばだてている聴衆。彼らの稀有な好奇心が演奏者にあれほどの集中力を発揮させたのではないでしょうか。これがサウンドアート企画シリーズのラストコンサートということで、アーツアポリアのディレクター小島さんがセッションの組み合わせを練りに練った成果がでましたね。

12日のプログラムが皆に発表されたのはむろん当日でした。大半がトリオで最後の2組がデュオ。

クリスチャン・ウェバー(bass) + 江崎将史(trumpet ) + ペニーネップ(selfmade electronics)
有馬純寿(helixphone)+ ノーベルト・メスラング(everyday cracked electronics) + 内橋和久(guitar)
Haco (pencil organ) + ギュンター・ミュラー( ipod, electronics) + 小島剛(laptop)
トマス・コルバー(guitar, electronics) + 山本精一(guitar) + 梅田哲也(selfmade instruments)
クリスチャン・ウェバー(bass) + mamieMU(termin) + 有馬純寿(helixphone)
ジェイソン・カーン(percussion, electronics) + 江崎将史(trumpet) + トマス・コルバー(guitar, electronics)
ノーベルト・メスラング(everyday cracked electronics) + Haco (stereo bugscope) + 山本精一(guitar)
ジェイソン・カーン(percussion, electronics) + 梅田哲也(selfmade instruments)
ギュンター・ミュラー( ipod, electronics) + 内橋和久(guitar)


スイス勢と関西勢のアーティストの即興は、腕試しや調和パターンじゃなくて、音、響きそのものの交流を味わうような、細心のアンテナを連立させているようなすばらしい演奏が繰り広げられました。電子音系はPAからの音量がひかえめで、アコースティック楽器は微音でも会場の自然エコーで響きわたるという特徴がありました。

いくつか部分的に回想してみることにしましょう。

クリスチャン・ウェバーはほとんどコントラバスの弦に軽く触れて倍音を浮き立たさせたり、胴の鳴りを聴かせたりする演奏。ペニーネップはノンインプットミキサーと持ち込みの複数スピーカーからボムっていう爆音。江崎さんはふだんのトランペットのスタイルだけど、途中で床に空き瓶を置いていきコツン...と響かせていた。有馬さんのhelixphoneは初めて拝見しましたが、金属のバネを吊り下げたサウンドオブジェにグラインダーで火花を放ったり、マイクでねらった音をリアルタイムでコンピュータにキャプチャーしたりして工夫されていました。mamieMUはあたかもテレミンの延長のように高周波の声を出すので超常的な雰囲気。ジェイソン・カーンは、スネア型の太鼓の上にシンバルを置いて指だけで細かく叩き続け、マイクとのフィードバックの間で微妙に変化していく音の波紋をつくりだす。梅田さんの自作楽器は換気扇や三種類の筒で組み合わさった装置。それ以外にも金属棒を指でこすってキーンというピュアトーンを出していました。後半に彼が荷台を動かしガタンッと雑音をひびかせた時にはじめてジェイソンさんは反応しました。それでマイクのボーーという汽笛のようなハウリング音のみを長く保持させたたのが印象的でした。スイス勢最年少のトマス・コルバーはおさえたドローン系のエレクトロニクス主体でした。かろうじて内橋さんが熱いギターらしい展開をさいごにもってきました。
arima.JPGumeda inst.JPG

わたしとしては、過去にヨーロッパのフェスティバルで数回お会いしていたギュンター・ミュラーとノーベルト・メスラングと初共演できてすごく嬉しかった。ギュンターさんは2つのipodとエフェクターを整然とテーブルに並べていて、これもスタイルの表れなんでしょうね。小島さんのラップトップとの相性も抜群によかった。わたしのペンシルオルガンが暴れモノなので、抑制するように少々念力をいれました。またノーベルトさんの前ユニット、壊れた電化製品を改造し自作楽器として使用するヴォイスクラックの演奏を10年前にロンドンで観て影響されましたが、今回はテーブル上にジャンクをぶちまけたように置いてある彼の楽器部品群をじっくり観察することができて得しました。フラッシュの放電などをラジオ経由で拾ったりしているようです。だからわたしの誘導性ピックアップ使用のステレオバグスコープと合わせて電磁系。このトリオは轟音でいくのかなとも予想していたんですが、山本さんがギターアンプに対して弱音のフィードバックを流して、ほとんどギターを弾かずという作戦にでたので、わずかな電磁波が折り重なり移り変わっていく顕微世界となりました。
gunter.JPGpencil organ.yuko low.jpgnorbert.JPG



ほんとにこのイベントは細部にわたっておもしろかったので、もし録音物を出せたらいいですね!

夕方にかけて赤レンガ倉庫はカイロが配られたほど底冷えしたにかかわらず、熱心なお客さんが大勢見守ってくださり、こうして成功に終わってよかったですね。赤レンガのスタッフの皆様ほんとうに、ほんとうにご苦労さまでした。


(写真:上右 - 有馬さんのセット、上左 - 梅田さんのセット、下右 - ギュンター・ミュラー、下中央 - Hacoのペンシルオルガン、下右 - ノーベルト・メスラング)
*サウンドチェック時に撮影 by Haco、下中央のみ撮影 by Yuko Nexus6
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HACO
歌手作曲家、プロデューサー、サウンドアーティストとして精力的に活動中。
元アフターディナー、ホアヒオ、ヴューマスターズ(現音採集観察学会)を主宰。
隔月刊ニュースレター配信中。

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