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ヴューマスターズ 大阪-メルボルン リミックス
●「View Masters ワークショップ」のレポートです
日時:2007年2月18日(日)
会場:浜寺公園ステーションギャラリー(南海電鉄本線浜寺公園駅舎内)


恒例の人気ワークショップです。一般公募者を対象に、各個人でサウンド・スポッティング(路上音観察)していただいたレポートの発表会。今年のコメンテーターは、VMリミックス展の出品作家からHaco、田尻麻里子、宮本博史、梅田哲也、司会は小島剛。採集者の観察記録(録音、日時場所、写真、コメント)を皆で鑑賞していきます。

当日持ちこみも含め9名、20件以上の提出物が集まりました。毎年、時代の移り変わりを示すある傾向が見られるのですが、今年からフィールドレコーディングに、ICレコーダーを使用した参加者が数人いました。しかしながら、あいかわずカセットで録音しているマイペース型も健在です。

興味深い音件をピックアップして紹介していきましょう。コメントは提出者ご自身の文章から抜粋させていただきました。

『harbor2, harbor3』
場所:宮城県塩竈市 塩釜マリンゲート
コメント:これらの録音はstethophone(*)を船を係留するために埠頭にある金属製の物体に置いて録音したもの。 harbor2における「きゅー」というような音は船と埠頭の間におかれた古タイヤ(多分船体を傷つけないためのもの)にこすれて発した音で、まるで櫂で船を漕いで居るような素敵な音が採集された。harbor3ではエンジン音が響いている中に、何かレバーを操作するような金属音が採集された。
*作者が聴診器を改造して作ったstethophoneに関する情報サイト: http://www.astrolabel.net/stethophone/

『冬の定番1』
場所:自宅
コメント:冬の定番といえばストーブ。寒い日に大活躍しています。やかんの沸騰する直前のコロコロとした音が好きだったので録ってみました。 寒がりなので、ほぼ毎日ストーブをつけ、この音を聞いていますが、採集音を何度聞いても和む音だな〜としみじみ感じました。

『道路(車)』
場所:阪神高速池田線豊中〜池田小花間
コメント:車に乗る時カーステをかける人がほとんど。カーステをかけずに周りの音に耳を傾けると、車がすれ違う音、道路と道路のつなぎ目の音、目覚ましの337拍子、などが聞こえてくる。

『かつて、これからも しばらくは』
場所:大阪市阿倍野区内
コメント:私は過去の記憶や未来の予感と共に今存在していると思います。 その時、その場所で記録された音には何が映り込んでいるのだろう。

『〜日常にとびこむ〜銀行のいちにち』
場所:銀行
コメント:銀行の中にはATMがたくさん。まいにちATMからどれだけのお金が出入りするのだろう。不思議なATMの中にはお姉さんがすんでいる。まいにち、まいにち、同じ台詞を言い続ける。同じ台詞を言い続けるお姉さんたちがたくさんいてお姉さんたちの言葉はだんだんと輪郭を失っていく。まるで同じ台詞の洪水のように。

『海』
場所:自宅ベランダ(2F)
「心を洗い流すような波の音」
最初は玄関で雨の音を録音したんですが気に入らなかったので、2Fで聞く自分のお気に入りの雨の音をベランダで録りました。 「千と千尋の神隠し」に出てくるシーンを思い出しました。(千尋が「海だ〜!」と叫んだような気がする)

『一つの素材と複数の解釈』
場所:南海電車高野線 極楽橋ー橋本間
コメント:元ネタとして高野線の音を使用。サウンドMT授業の教材として使用。ごく普通の音の「切り取り」と「最小限の加工」を通じて、いかに音楽的ストーリを組み立てられるかを各自制作。作品は6名の学生と私の計7名。それぞれにテーマをつけてもらった。

『ラインひとつ越えただけで・・・』
場所:堺市西区津久野町 JR津久野駅(阪和線)周辺
コメント:同じ駅前なのに、出口の方向により風景も音の聞こえ方もまったく違う、という経験、誰にでもあると思います。そのギャップをひとつの ストーリーに表現してみました。
ロケ地に選んだ駅は出口がひとつしかなく、地下道で線路を越えることができるようになっているのですが、線路からそれぞれ同じような距離のところに立って 録音したにもかかわらず、電車の音が周りで流れている音によって全然違った雰囲気を出しているところに改めておもしろさを感じました。電車の音の他にもたくさんの音が詰まっていますが線路を挟んだだけですごく差があることに驚きと興味を覚えました。何気ないことなのですが、改めて録音することで、今まで見 えなかったものが少し見えてくるような気がしました。

『せんたくき』
場所:自宅
コメント:我が家の奇妙な音シリーズ。うちの洗濯置き場は台もプラスチック製なので回る音がよく響く。


以上、もちろん実音を聞きながら、記録写真を見ながら鑑賞するのが理にかなっているのですが、各自のコメントに独自のユニークな視点が現れているので、ここでご紹介させていただきました。今回は浜寺公園ステーションギャラリーという比較的小規模な場所に参加者、見学者、アーティストたちが一同に会したので、客席から積極的な感想や意見が飛びだし、まさにカジュアルな学会の雰囲気。また視覚障害のある方も参加提出してくださり、音に対する感覚がカラフルで想像豊なことには驚かされました。
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展覧会の方も最終日。これにて、「ヴューマスターズ 大阪-メルボルン リミックス」は幕を閉じました。

"日豪リミックス"の回想なんですが、オーストラリアからの来日アーティストたちと街歩きをしていたら、その一人が地下鉄のプラットフォームで「あの白い箱の物体はなんですか?」と指さすのです。じつはそれ、「百葉箱」。普段わたしたちがぜんぜん気にもとめないしろものです。視点の違いが新鮮でした。これぞまさにヴューマスターの本領発揮と、にやにやしたものです。
会期中に、東京からサウンドアーティストのフィリップ・サマーティス氏夫妻や、サンレコ誌の編集長、その他大勢の方々に会場まで足を運んでいただき誠に感謝いたします。

展覧会、トラム・コンサート、ワークショップがほんとうに無事うまく運んだのは、ひとえに主催アーツアポリアの小島さんをはじめとする優秀なスタッフとアーティストたち、オーストラリア側キュレーターのジェインさんの熱意のおかげです。この場を借りてご協力いただいたすべての人々に心よりお礼いたします。また、今後に成果を繋げていきたいものですね。
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HACO
歌手作曲家、プロデューサー、サウンドアーティストとして精力的に活動中。
元アフターディナー、ホアヒオ、ヴューマスターズ(現音採集観察学会)を主宰。
隔月刊ニュースレター配信中。

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