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5月31日、今朝はめずらしく晴れ間がみえた。パリに来てから毎日のように曇り空で雨もちらつく。
リハは夕方からなので、すこしオフの時間がある。どうしようか? ケータイの世界時計を見る。部屋に閉じこもっていても、神戸の父の手術のことが心配で、気が気ではない。
思い立って、外を出歩くことにしました。

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地下鉄メトロで乗り換えなし、あっという間にコンコルド駅に着いた。出口すぐに現代写真ギャラリージュ・ド・ポームを見つける。ミッシェルに教えてもらったとおり、今シンディー・シャーマンの回顧展を開催中。行ってみることにしました。すべての作品は"Untitled"だということに気づかされた。80年代の作品にはあらためて霊感させらるものがありました。

公園の向かい側には長蛇の列が渦を巻いていました。きっと、オランジュリー美術館への入場待ちをしている人々でしょう。昨年、改修工事で閉鎖していました。モネの『睡蓮』をいちどはここで鑑賞したいものですが、あの列に並ぶ余裕は今のわたしにはありません。

コンコルド橋からは、エジプトから贈られたオベリスクや、遠方にエッフェル塔、ノートルダム大聖堂など、パリを代表するモニュメントが眺望できる。革命時には血なまぐさい処刑場となった場所とは想像もつかないコンコルド広場。O字型の道路には車がひっきりなしに走っていたし、はしゃぎながら観光する人々を見るにつけ、わたしはぽっかり取り残された気分になりました。

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ふたたびチュイルリー公園にもどり、緑のなかを早足で歩きまわっていると、雲の合間からにわかに青空が顔をだしました。ジュ・ド・ポームの裏手には、かつてのチュイルリー宮殿の柱の一部が残されているという。植木のあいだには、石像やブロンズ像、ポップなデザインのものにいたるまで、さまざまな野外彫刻が置かれていました。木陰で読書をする人、アイスクリームをほうばる子ども、人々が思いも思いにくつろいでいました。こうしながらも日本との時差があるので、どこか時空をさまよっているような気がする。


ケータイの世界時間を確かめたら、日本は夜9時ごろ。それは10時間におよぶ手術だと聞かされていました。
わたしはまず公園のベンチに腰掛け、緊張しながら実家に電話した。

「あのね、いまさっき家に帰ってきたところで」 
母の声は電波が地球を一周しているとは思えぬクリアさで、
「うん、お父さんの手術ね、うまくいって麻酔の目覚めもすこぶる良くって」。


ああ、助かった〜、心底。深く息を吸いなおし、空を見上げた。
もう自分がパリでも西宮でもどこにいるでもなく、ただ陽差しが明るく降りそそがれているのを感ていました。
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HACO
歌手作曲家、プロデューサー、サウンドアーティストとして精力的に活動中。
元アフターディナー、ホアヒオ、ヴューマスターズ(現音採集観察学会)を主宰。
隔月刊ニュースレター配信中。

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