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10月20日の朝、雨がふっていた。晴れると陽差しがきつく日中は暑いけれど、日陰や室内、夜間は急に冷え込みます。オーストラリアはもっと春っぽいのかと思って薄着でいたわたしは、疲れもあってすぐに鼻がぐすぐすいいはじめた。毎朝マデリーンが作ってくれたジンジャー入りのミックスジュースにはほんとうに救われました。

メルボルンからブリスデンへ飛行機で移動。ここでオーガナイズしてくれるローレンス・イングリッシュさんが空港の道路沿いで大きく手を振っていました。彼はエレクトロニクスやフィールドレコーディングの音楽家で、いまオーストラリアで非常に注目されているインディー・レーベルのひとつROOM40を主宰。車で彼の家に向かう途中の風景は、どこかカリフォルニアっぽい。もちろんオーストラリアはサーファーのメッカであるし、椰子の木や建物のかんじもどことなく。そうわたしが言うと、「本当にそうなんだよね。ビーチには近いし、ちょっとした丘まであって地形が似てるんだ」。「でもあなたたちはアメリカンっぽくないよね」。「だって僕たちアメリカ人じゃないもん」(笑)。彼らは日本の文化やアーティストが大好き。「日本までは飛行機で8時間程度。ヨーロッパなら20時間はかかる」。大陸だけど孤島、多分に地理的なものが作用しているようです。他の新しい文化から刺激を得ることを常に若者たちは希求している。彼の家に着いたら、奥さんのレベッカと愛犬が待っていました。「ね、これちょっとしたスーベニールだけど」とローレンスに手渡されたひとかたまりのもの。それはROOM40のリリースCDと彼の作品を選りすぐった10枚でした。

演奏会場に向かう途中、「僕は特異なコウモリが好きでよくフィールドレコーディングするんだけど、その場所を見たい?」とローレンス。「うん、見たい」と応えると、車を停めて雨のなか公園路を入っていきました。「あれ、あそこに!」と指さした方向に目をやれば、なんと木から果物のようにたわわにぶら下がっている黒い物体が。「こんな大きなコウモリいままでに見たことないわ!」。日中は羽を折りたたんで群れで眠っているけれど、羽を広げると体長1mにもなるオオコウモリだったのです。オーストラリア体験の土産話その2でした。

今晩の会場は、Judith Wright Centre of Contemporary Arts。わたしの公演には比較的こじんまりとしたリスニング・ルームのような空間が割り当てられていました。スクリーンやPA機材もいいものが揃っていて、スタッフも手際良く動いてくれます。本日はソロ・コンサートで、前半にステレオ・バグスコープ、後半に歌とラップトップのセットを演奏。ローレンスが自ら作ってくれたポスターも入り口や廊下に貼られていました。タウン誌には写真入りでわたしのインタビューもばっちり載っていたし、広報からすべての段取りを彼ひとりでやりふりしてくれたようです。「今日のチケットはソールドアウトだって!このシリーズ企画はじまって以来だよ」とローレンスは顔をほころばせました。7時きっかりに開場が始まり、座席は順当に埋まっていった。メルボルンより客層が若いように見えました。すごく落ちついた雰囲気でじっと聴いてくれている、シンパシーを感受しました。部屋の特性として音量を押さえたPAでしたが、音自体が非常にクリアだったので、バグスコープも歌モノも細部に渡って響き届いたのではないかと思う。1部、2部と無事終了。ローレンスにも主催者としてまた聴き手として、たいへん喜んでもらえたので何よりです。

公演後、オーストラリアで唯一真夜中でもわいわいしているという、通りを歩く。安くて美味い人気の中華料理屋へ連れて行ってもらいました。とてもキッチュな内装ですが、豆腐のてんぷらやチリ味のチキンをご馳走になり、大満足。ローレンスはアイスティーでわたしはビールで乾杯!その後、車で小さな丘までドライブすることに。山をらせん状に登っていくとほどなく夜景のすばらしいスポットにたどり着きました。なんだかこういうシチュエーションって懐かしさを感じる。「やはりツインピークスみたいかなぁ」と心のなかでつぶやいていました。
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HACO
歌手作曲家、プロデューサー、サウンドアーティストとして精力的に活動中。
元アフターディナー、ホアヒオ、ヴューマスターズ(現音採集観察学会)を主宰。
隔月刊ニュースレター配信中。

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