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4月20日、会場のLes Hallesでは、イベントシリーズ「Trouble #3」が開催されている。フランス語とオランダ語でバイリンガル表記されたカタログを見ると、様々なパフォーミング・アートの催しが年中びっしり企画されているようだ。木の内装の小劇場、体育館のようなに広い多目的スペース、ホワイエではDJ、ミニ展示、映像作品の上映会、建物の表玄関前でも路上パフォーマンス、と施設のいたるところで展開中。ホワイエのカフェ&バーもなかなかお洒落で、キッシュとフレッシュサラダなどの軽食もOK、何よりベルギーの発酵ビール(ブロンシュ)が安く飲めて嬉しい。
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今回は、ヴォイス・パフォーマーのクラウディア・トュリオッジと昨年パリで共作した組曲「 Fais une halte chez Antonella」をデュオで演奏することになっていた。控え室で彼女の声とわたしのラップトップとで復習してみる。サウンドチェックの通しリハもすんなりいきました。

大会場には2つのステージが設けられ、交互にプログラムが展開されます。3日間のフェスティバルのテーマは「Partitions - A perte de voix」とあって、声を使ったパフォーマンス、現代音楽、リーディングといったプログラム。なので、カタログには口を大きく開いたアーティストの写真が集められていて、ちょっとコワイ。ジョン・ケージやモートン・フェルドマンの声楽曲の演奏を聴き逃したのは残念でしたが、いくつかの公演を観ることができました。たいていフランス語なのでわたしにはよく内容は理解できないけど、わざともっさりとした味を挟んだコミカルなパフォーマンスが多かったです。実験音楽のヴォイス・パフォーマーと手法がぜんぜん違う、シアター系とでもいったらいいのか、とにかくこの手のパフォーミング・アートのフェスティバルに参加したのは自分としては初めてのことで、どうリアクションしていいのか多少面食らいました。

夜10時前、「 Fais une halte chez Antonella」の本番開始。仮設の客席には薄手のクッションが敷かれていて、カジュアルな趣。ステージは平でオーディエンスとの距離が近い。そのせいかとてもリラックスしていて友好的な雰囲気が漂っていました。時にみせるクラウディアのヴォイス即興も堅さがなく以前より大胆になっていました。観客のノリが良かったことが要でした。

初日コンサートの成功をクラウディアと喜び合い、つかの間の別れを告げました。「じゃあ、3日後にパリで合流ね!」

4月21日、オフの日なのだが、次の会場近くのホテルへひとりタクシーで移動。「2時からチェックインなのでまだお部屋の準備ができていません。荷物を預かっときますから、そこらをぶらぶらしてきてくださいな」とホテルのフロントマンが言う。時計を見たらまだ正午前だった。「このへんの地図はありますか?」とわたしは尋ねる。「いや、ここには無いんですけど、ツーリスト・インフォメーションなら300mほどの所にありますよ」。
身軽になったので、わたしは迷わず散歩することにした。青空が広がりもう初夏のように陽が差していた。ところが歩くにつれ、これは筋を間違えたのではないかという気がしてきた。見渡してもツーリスト・インフォメーションなどありそうにない。でも、明日にソロ演奏する会場Recyclartはこの近くじゃなかったかな? じつは2004年にチェロ奏者の坂本弘道さんとAsh in the Rainbowでツアーした時にもそこで演奏した。なんせ、旧シャペル駅の高架下に創設されたアートスペースで風変わりだ。斜めの方角に目線を移すと、高架に電車が走りながら曲がっていくのが見えた。沿線のコンクリート壁に添って歩くと見覚えのありそうな小さな公園。「あっ、この壁の落書きはまさしく!」Recyclart.roadside.jpg
そう、Recyclartに、あっという間にたどり着けたのでした。ただ昼間は全部の入り口のシャッターが降りていて無人状態らしい。ホテルに帰るのはまだ時間があり余っているので、そこからまた歩き続けることにした。教会巡りの案内板も道中に見つける、小さなギャラリーやお洒落なショップが小路に沿って立ち並んでいた。丘まで登っていくと立派な美術館や博物館のある大通りに出た。地図を見ながら歩いている観光客ばかり。また丘をくだり、初心にもどってツーリスト・インフォメーションを探すことにした。方向音痴の自分が地図もなしに迷うことなく元の位置(サイト)に戻れるなんて、われながらすごいと思った。独り旅は普段ない学習能力が開発されるのかもしれない。そして、通人に道を尋ねること数回、ついにツーリスト・インフォメーションのある広場に到達した。とどのつまりは、そこがブリュセル観光のメッカで、ギルドの栄えた歴史を残す絢爛豪華なグラン・プランだということが判明した。多くの観光客が広場に座り込んで感慨深げに時を過ごしていた。わたしは手に入れた地図を広げ、数ページのみの旅行ガイドをあらためて読んでみた。よもやあのRecyclartとホテルが、こんな観光抜群のローケーションにあるとは、つゆとも知らずに訪れたのでした。たった一人で歩き回ったけど、ゆったりとした休日を過ごせました。(ブリュッセル一日観光の写真は5/21の日記に貼っています)

4月22日、Recyclartはコンサート会場、ギャラリー、アトリエスタジオ、カフェレストラン、事務所をもった総合施設で、アートを通して地域社会や都市文化を結ぶような企画制作をしている非営利団体。市の援助を受けながら運営されている。先鋭的なアートを発信するとともに、公共の場でのオープンエアな催し、ホームレス対策のスキルなど地域に根ざした活動を1997年から続けている。
BarRecyclart.jpgRecyclartFlont.jpgRecyclartLobby.jpg

昼2時頃からRecyclartでサウンドチェック。今夜のイベントはパリやブリュッセル在住のアーティスト達の他、ニューヨークからJim G Thirwell aka Foetus、ロンドンからLittle Annie、オーストリアからJorg Piringerと合わせて9組が主演。以前オーガナイザーのマーク・ヤコブさんからのメールでは、"詩とエレクトロニクス"というテーマのイベントだと書いてあったので、静かな電子音響のイメージを想像していました。ところが、他のミュージシャンのサウンドチェックを聴くにつれ、かなりデジタルな爆音系が多かったのでした。バーのカウンターに置いてあったフライヤーを見て、始めて納得。タイトルが「"Open & Shout" - Sound Poetry Spoken Word - Electronic Punk Rock & Noise」だったのでした。ヨーロッパのオーガナイザーってアバウトな説明しかしないのだなぁ。わたしは、歌とラップトップでわりと繊細なソロのセットを準備していたから、浮くんじゃないかとすこし不安になりました。

8時すぎにスタート。地元の若者がたくさん集まってきました。なんか高架下のアートセンターというのはSFチックな雰囲気があります。それに電車が通るたびに轟音が天井から響き渡るという特殊な会場です。ラップトップの激しいノイズミュージックの演奏が続く、各20分〜30分と短めに組まれている。Recyclartの企画スタッフでもあるLucille Calmelのパフォーマンスがまさにパンクというべきか。彼女は詩の朗読をしながら、自分の素腹にマチ針を何本も刺していくのでした。
10時頃、いよいよ自分のソロ。ざわざわしていた聴衆も集中するにつれ静かになってくれました。時差ボケの影響でちょっと声がコントロールしにくかったりもしますが、なんとか調子を上げて悔いのない演奏ができました。ほっ。

短い休憩を入れて2部のはじまり。じっくりイベント鑑賞することにしました。Compostという絶叫朗読ユニットで最出演のLucilleが、赤いラメの粉末をを口に頬張ってから、ぽわーっと吹き出しました。空中にキラキラした粉が舞い降りました。しかし本人の喉や眼や鼻に入ったら危険そうで、これまた刺激的。Jim G ThirwellのパンクロッカーなヴォイスとAngharad Daviesの端正なバイオリンも初コラボなのに上手く絡まってました。最後はピアノ伴奏で裏ブロードウエイ風に歌うLittle Annieの妖艶な舞台でしめくくられました。
終わったのは深夜2時頃、長い夜でしたがずいぶん楽しみました。

「今夜のイベントはすべてハーシュなかんじで、自分の演奏はデリケートすぎやしないかと、ちょっと心配しました」そうわたしが言うと、プロデューサーのマークは「たしかそう、なのでHacoでちょっと落ちつくようにプログラムを設定したんですよ、ほんと美しいパフォーマンスありがとう」とハンサムな笑顔をこちらに向けました。おまけに「Ash in the RainbowのCDは我が家のヘビーローテーションだよ。うちの坊主もよく聞いてます」とのこと。
出演ミュージシャンも気さくでいい人ばかりだったので、楽屋でわいわい盛り上がり、ホテルに戻ったのは朝の4時近くになっていました。
RecyclartBackstage.jpgRecyalartHotel.jpg
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HACO
歌手作曲家、プロデューサー、サウンドアーティストとして精力的に活動中。
元アフターディナー、ホアヒオ、ヴューマスターズ(現音採集観察学会)を主宰。
隔月刊ニュースレター配信中。

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