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25日昼1時から、報道関係者を招いたプレヴュー。

暗闇のなか、2人のダンサーの足音が聞こえて、照明のレーンに添って横っ飛びであらわれます。緊張感がただよう瞬間です。「ジュン、ミチ、ジュン、ミチ」の連呼はやっぱりユニークでほだされます。床のスポット・ライトの輪のなかにジュンが入って、一曲目をスタートさせる。いくつかのキューの直前は神経を集中させています。うまくクリアできました。部分的にバック・ライトの明度が低すぎるところは、後で調節することに。

4時からは、広太組の4フィービー、リー、ニック、ジョアンヌと、ルーシー組のミチ、ジュン、合わせて6人のダンサーが合同で、舞台上でウォームアップを始めます。雑談もまじえて、リラックスしながらストレッチをしたり、お互い動きを確認し合ったり、身体を温めています。

客席後方の木枠で囲ったオペレーティング・ブースでわたしは演奏します。両脇にPA卓と照明卓、狭いカウンターに3人が座りますが、高い椅子も用意されているのでステージ上のキューもはっきり確認することができ、落ちついて本番に臨めます。
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6時、メルボルン公演初日。大入り満員のきわみです。
ショーは2本立てで各35〜40分程度です。

「Setting」が始まりました。
白むく 花嫁衣装のシーンでは、場内から笑いがこぼれる。「はい、足袋をはいてください」と日本語でてきぱきと着付けの手順を説明するミチ。花嫁役の方は男性のジュンで、英語で通訳をします。途中で、口をふさがれてタコ八のようになったり、まるでマンガのように可笑しい。ここで掴みがあって、あとはうまく流れに乗っていくかんじです。2人がそれぞれ睡眠しているシーンでは、ユメコさんによってステージ上に淡々と並べられてきた物たちが、薄明かりのなかに地図のように浮き立って効果的でした。マネキンの腕の動きを2人一体になって演じるラストは、ゴングの音が四方から交互に鳴るようにしています。2人がゆっくりと別方向に立ち去り、観客はステージ上に残されたソックスや大根や皿で描かれたパターンを眺めることになります。音楽は長いフェイドアウトで最後の鐘の余韻。そして照明がブラック・アウト。
キマリました! 拍手の渦のなかおじぎをして、皆にっこりしました。

舞台転換のため間に休憩を挟みます。

「Chamisa 4°C」。またここで観ることができました。
日本公演より、ステージが狭いので全体的に縮小されたかんじはいなめません。部分的にメルボルン用に変化したところもあって、線香花火の演出や、セリフが変わったり、おもしろい発見がありました。悲鳴をはっしたり、怒鳴りあったりと、ヒステリックな部分、美しくも哀しい自己憐憫など、死にいたる激しい心の葛藤を目にみえるかたちにした問題作です。ほんとうに若い4人のダンサーはいつも忍耐強く、真摯に取り組んできたというのが、舞台を見ていて感じられます。こういう振付家の野心的な作品を受けとめるのは、交流プロジェクトを期待してきた観客には賛否両論あるかもしれませんが、舞踏のエッセンスを取り入れた異形のダンスがここにあり、というかんじです。これもまた拍手が沸き、いいスタートをきりました。


flower.jpg楽屋では、プロデューサーのロージーたちから花束と心のこもったメッセージ・カードをいただきました。それにしても可憐な花で、日本ではいちども見たことのない種類でした。
今夜の公演をいくつかの友だち、ジェインさんや、サウンドアーティストのフィリップ・サマーティスさんと伴侶マデリーヌさんも揃って見に来てくださいました。ロビーでシャンペンを乾杯、その後はアーティスト・カフェShedで内輪のパーティーがあり、皆で飲みながらおしゃべりをしました。ビクトリア国立ギャラリー(NGV)インターナショナルでもうすぐ開催される「TEZUKA」展のキュレーター、フィリップ・ブロフィーさんにも昨年につづき、ここでばったりと再会できてよかったし。とても幸せな気分でした。


26日正午、Shedにて、アート・コーディネーターのジャインさんと3人の若い美術家とのミーティング。彼らは来年の1月〜2月に計画されている、View Mastersの日豪交流関連イベントのために来日を予定しています。こちらのコンセプトを伝えたところ、すんなり理解してもらえたようで、相応した作品をレジデンス制作するとのこと。音響彫刻やメルボルン-大阪の地図を素材にしたもの、フィールドレコーディングも軸になっています。VMワークショップのライブラリーにも参加したいとのこと、積極的で安心しました。また、今回の共通のテーマは"トラム"で、路面電車のなかでコンサートを実施する計画があります。大阪では阪堺電車、ここメルボルンの市内でもトラムは走っていますから、双方でプロジェクトの開催を進めていくというわけです。オーストラリア側はジェインさん、日本側はアーツアポリアの小島さんとのやり取りは、まだこれからというかんじです。とりあえす、3人のアーティストと実際にお話しできて少し見えてきました。DVDなど資料をいただいたり、つい先日、サムデイ・ギャラリーでディランの個展オープニングも拝見できたことだし。
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6時、公演二回目。

「Setting」は、かなり好意的な評判を呼んでいて、なかでも「あの女性ダンサーは可愛かったね〜」という声をあちこちで耳にしました。ルーシーによると、「水も滴るほどチャーミング」とミチのことをたとえた人がいたそうです。昨夜より、もっとダンサーたちががのびのびと踊っていたようにかんじました。


7時半、アート・センターの大劇場へ。
ビル・T・ジョーンズ/アーニー・ザーン ダンス・カンパニー「Blind Date」を鑑賞。

2004年に創作された演目なので、オンタイムで出会いたかったなーとは感じましたが、それにしてもパワーある一作でした。社会的なメッセージを皮肉っぽくに織り込み、複数の映像スクリーンやテロップ、アヒルの着ぐるみまで飛びだして、様々な状況を想定させる。テレビなどの報道やモラルの圧力に翻弄されるアメリカの社会に起きているデモクラシーの揺らぎ、例えばそれが愛国心、戦争、災害、宗教的な論議だっりたりする。様々人種、様々な価値観があっていいはず、しかし自己を見失うことの危機、ダンサーがグループになって、「Me!」といってぶっ倒れる者に、跳びより支え合うゲームのような動きが繰りかえされました。ビルは背広姿でステージ上で煙草を吸いながらひとりの人物を演じる、時にセリフを唄いまわしたり、その声の抜けることといったら。HIVポジティブになりはしても、20年間も健康体を保っている強靱さはカリスマ的。オーケスラ・ピットにバイオリンやキーボード、ハンド・ドラムなどの小楽団、舞台上のセリフや歌もぜんぶ生で、ダンス作品におけるライヴの醍醐味を味わえました。
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HACO
歌手作曲家、プロデューサー、サウンドアーティストとして精力的に活動中。
元アフターディナー、ホアヒオ、ヴューマスターズ(現音採集観察学会)を主宰。
隔月刊ニュースレター配信中。

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